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美食の聖地〜サン・センバスチャン(スペインバスク地方)〜のすごさについて

友人が年末年始にスペインにあるサン・セバスチャンを訪れるというので、三年前に訪れた時の写真を見ながら、レストラン/BARリストを作っていました。ところが私が撮った景色の写真は2枚ぐらいしかなく、あとは食べ物の写真だけ…。

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        風景写真1:ビスケー湾。海水浴、サーフィンを楽しむ人々

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     風景写真2:

                 バスク地方の有名な飲み物チャコリ(*1) やワインを作っているワイナリー

 

サン・セバスチャンはスペインのバスク地方にある人口18万人の小さな街です。しかし、ここはおいしい食べ物を求め、毎日世界中から多くの人が訪れる街なんです。三年前私がこの街を訪れたのも同じ理由。おいしいピンチョスとおいしいワインを満喫するため。ですから食べ物の写真が多くなってしまうのはしょうがないのです。

 

スペインにはミシェラン三つ星(最高格付け)のレストランが7件ありますが、そのうちの3件がサン・セバスチャンにあります。さすがに三ツ星のレストランで食事をしたことはありませんが、サン・セバスチャンだけでなくスペインではこういったミシェランを得たレストランでも、特に気取る必要はなく、気軽に美味しい食事が楽しめるのがいいところなのです。美味しいと思った料理のレシピをたずねればほとんどのシェフが教えてくれますし、おいしい料理を満喫できたことのお礼をシェフに伝えたければ、キッチンから出てきてくれて普通におしゃべりしてくれるのも嬉しいことです。

 

しかし、サンセバスチャンの一番の楽しみ方はバル(BAR)のはしごです。BARとはだいたいお昼過ぎ頃から、レベルの高いおつまみ(ピンチョス)をつまみながら、おいしいワイン、ビールなどが楽しめる、いわゆる日本でいう立ち飲み居酒屋です。(もちろんソフトドリンク、おいしいコーヒーなどもあります。)

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サン・セバスチャンのあるバスク地方の代表的なピンチョスといえば、

  • 「Gilda (ヒルダ)」:オリーブ、アンチョビ、(辛くない)青唐辛子のピクルスが串に刺さった食べ物。

     

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「Pimiento de guernica(ピミエント・デ・ゲルニカ)」:ししとうをオリーブオイルで素揚げして塩をふりかけた食べ物。

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「Tortilla de bacalao (トルティーヤ・デ・バカラオ)」:水で戻した塩鱈のオムレツ

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などなど。ほとんどが1〜3ユーロと値段も手頃です。

 

各BARが名物であるピンチョスを2、3品程もっています。ワインなどを飲みながらそれぞれのBARでいくつかのピンチョスをつまみ、そしてお会計をして、次のBARへと移って行くのが、これがまた楽しくてしょうがないのです。

 

Bar Borda Berri:サルモレホスープ(食べるトマトのスープような食べ物)リゾット)

   

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Tamboril :イベリコハムのサンドイッチ

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La vinña:チーズケーキ

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そのBARの料理がおいしかったら、床に紙ナプキンを投げ捨てるのがマナーなのです。どこのBARが美味しいのか迷った時は床に紙ナプキンがたくさん落ちているところに入れば間違いないと思います。

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ではなぜ、こんな小さな街サン・セバスチャンがなぜ世界の美食の街になれたのでしょうか。

 

  • 目標の明確化

- レシピを共有

なんと、サン・セバスチャンのレストラン、BARで働くシェフたちは「自分の技やどこかで習得した技、あたらしい技をお互いに教え(*2)」あっているのです。大抵、地方には何件かの有名なレストランがあり、多くの人々はそこで食事をするためにその街を訪れますが、一日または一晩でその一件のレストランが集客できる数には限られています。 しかし、シェフ同士がレシピや技を教えあえば、街中の食のレベルが全体的に上がり、「一件だけでは集められないほどの人をその地へ呼び込むことができるでしょうし、一人では開発したり、作ることのできないような美味しい料理をだすことができるようになる(*3) 」のです。検索サイトで「サン・セバスチャン」と入れてみてください。「美食」「美食の聖地」「ミシェラン」「お薦めバル」というワードが一緒にでてきますよ。

 

−  将来活躍する若手シェフの育成

サン・セバスチャンでは若手シェフの育成を重視し、1992年に料理学校が設立されました。また、2011年にはバスク・クリナリー・センターという四年制の大学が開講。ここでは有名レストランのシェフが講師になり地元のバスク料理が習えるのはもちろんこと、レストラン経営、料理研究、料理科学など学べる場所です。将来の優秀なシェフになりたいという夢と情熱を持つ人であれば、どこの国からでも応募ができるようになっています。こういった若者達に、一流のシェフ達が自分たちの知識、経験、技の全てを喜んで教えるのです。そのうちここから世界トップ50レストランのシェフに選ばれるようなすごいシェフが現れるのは遠い未来の話ではないでしょう。また世界的に有名な大企業や地元の飲食企業などが大学のスポンサーになっていることもとても興味深いことです。

 

シェフだけでなく、この地方の政府、企業、街が一体となり「世界の美食の街になる」という明確な目標を持ち、その目標に向かう日々の努力が一層サン・セバスチャンの「食」をレベルアップさせているのだと思います。

 

  • 伝統食とモダン食の融合・自然と共存

スペインでシェフの方とお話をさせていただくと、どのシェフからも「このレシピは僕のおばあちゃん(またはお母さん)のレシピなんだよ」ということをよく聞きます。ここサン・セバスチャンでも同じような話を何回も聞きました。

 

街の目の前には美しいビスケー湾、ちょっと行けば山というように自然が豊富なサン・セバスチャンは多くの新鮮な食材に恵まれています。代々伝わるレシピをこの先も残していくためには、自然と共存し、大切にしていかなければならないということも多くの方から聞きました。

 

一方で、作り手がいいと思えば常に新しい食材やレシピを世界中から積極的に取り入れているそうです。例えば、A Fuego Negroの神戸ビーフミニチュアハンバーガー。合羽橋によく売っているミニチュアの食品サンプルくらいの大きさのハンバーガーの中にジューシーな神戸牛がはさまれています。付け合わせはバナナチップス! 

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また、あるBARでマグロのタルタルかカツオのたたきをいただいたら、ムース状のわさびが添えられて出てきました。日本では大抵練り状のわさびで、私はいつも使い切ることができず残してしまうのですが、ムース状だったため食べやすいのかどうかわかりませんが、添えられていたわさびは全部使い切りました。

 

 他にも、わかめ、柚子、昆布など、ここ美食の街サン・セバスチャンでも和の食材が多く見られました。和食の素材がサン・セバスチャンのシェフたちの手にかかると、こんな味に、こんな形になるんだと、一つ一つの料理に舌鼓を打ったことを思い出します。 

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伝統を大切にしながらも、新しい素材を積極的に取り入れ、融合させることで常にあたらしい、ワクワクする料理が食べられるのがサン・セバスチャンの大きな魅力です。また、その伝統をずっと守っていくためには、我々に食材を与えてくれる自然を大切にしていかなければならないというシェフ達の姿勢もとても素敵だと思います。

 

  • 街中の人々が美味しい食を心から愛している

サン・セバスチャンに滞在している間、様々なレストランやBAR、市場でおいしい料理いただいたのですが、どこで食べても常に美味しいのです。ハズレも普通もないのがとても不思議でした。

 

BARの中でも一番のお気に入りのBAR、Bar Haizeaへ3回目の訪問の際、たまたまお客さんが少なかったので、このBARを仕切っているおじさんに思い切って「なぜサン・セバスティアンの料理はこんなにレベルが高いのですか」という質問を投げかけてみました。

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 googleの翻訳アプリを使いながらいろいろお話ししてくれたおじさん atBar Haizea

 

その方は「私たちは美味しい料理をたべることが心の底から好きなんだよ。」と真剣な顔で答えてくれました。サン・セバスティアンが美食の街と言われるのはこれに尽きると思います。

 

また「美味しい物を食べるとみんな幸せな顔になるし、その顔を見ると、こちらまで幸せになってくるんだ。だから私たちは毎日おいし料理を作り続けるんだよ」と。

 

サン・セバスティアンにはたくさんの世界的に有名なレストランやおいしすぎるBARがたくさんありますが、他の地域、国でオープンするとうことはありません。なぜなら彼らが誇りにしているバスク料理とはここで使う素材がここで取れる新鮮な魚、肉、野菜を使うからなのです。だからあそこのBARのあの料理がまた食べたいと思ったらサン・セバスチャンに行かないと食べられないのです。

 

この街の人々と話していると、食べ物に対する愛情、情熱がとてもよく伝わってきます。自分たちの料理を愛することは、自分たちが住む場所の自然、土壌、歴史、文化、人々を愛することにつながっていくのだと思います。ですから、はじめに戻りますが、自分の街をよくしていくためには、いいと思ったことは積極的に取り入れ、それを他の人と共有することを決して惜しまないのでしょう。

 

世界の美味しい料理関連の記事には、サン・セバスティアン、東京や京都の地名が必ず記されています。新鮮な素材、旬な素材を使いシンプルな味付けが最高の料理という考え方、美味しい料理を愛する心など日本とサン・セバスティアンには共通する部分がたくさんあると思います。

しかし、日本との大きな違いはサン・セバスティアンは住民、民間、政府が自分たちの得意とする分野に焦点をあて、現在、未来への具体的な計画をみんなで共有していることです。

 

さて、日本はどうでしょうか…。

 

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お勧めBARリスト:友人に作ったリストを皆さんとも共有したいと思います。

Bar Haizea: 一番のお気に入り!何度おとずれてこのBric de Bacalaoを食べたことか…。お店の人にお勧めを聞けば美味しいもの出してくれます

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Bar Borda Berri(牛の頬肉、サルモレホスープ、リゾット(Risotto de idiazabal))

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La Chuchara de San Telmo(牛の頬肉carrillera de terneraが有名)

Bar Goiz Argi (串に刺してある海老 (Brochetas de gambas))

Taberna Gandarias Jatetxea

La Mejilloneria (ムール貝mejillones tigres)

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レストラン:Bodegon Alejandro(ランチのテイスティングメニューがお勧め)

市場内:朝すこし早くおきたら市場での朝食がお薦め

 

 引用:

*1チャコリ:スペインバスク地方で微炭酸の若い白ワインのようなお酒。注ぐ際には高い位置からコップに注ぐ。そのパフォーマンスも見どころ。

*2「人口18万人の街がなぜ美食世界一になれたのか」—スペイン サン・セバスチャンの奇跡 p.103

*3「人口18万人の街がなぜ美食世界一になれたのか」—スペイン サン・セバスチャンの奇跡 p.104

 

参考サイト/文献

https://www.bculinary.com/en/sobrebcc

https://edition.cnn.com/travel/article/world-best-food-cultures/index.html

「人口18万人の街がなぜ美食世界一になれたのかースペイン サン・セバスチャンの奇跡」 高城剛 2017年3月15日